「トポール」と「ローラン」

三鷹台駅の近くに存在するケーキ店「ローラン」。

「ためらい坂」に登場するケーキ店「トポール」。

建物の姿やロケーションが似ているわけではない2つのケーキ店だが、諸星先生自ら「ケーキ屋はね、最初〈ローラン〉という名前にしたんですけど、実際にあったんでこりゃマズイかなって〈トポール〉にした。『ファンタスティック・プラネット』のローラン・トポールですよ。」(彷書月刊2005年7月号 特集:このさき諸星大二郎一丁目 インタビュー記事より)と、作中のケーキ店の名を井の頭のケーキ店「ローラン」と、フランスのイラストレーター・作家の「ローラン・トポール」の名にちなんでつけた事を明かしている。

ちなみにローラン・トポールと「ファンタスティック・プラネット」については「(トポールの)マンガはよく知らないのですが、この人が原画を描いたアニメ『ファンタスティック・プラネット』が好きです」(「不熟」高橋葉介との対談から)とも語っている。同作は諸星大二郎「失楽園」にも通じる奇妙で終末的な異界が描かれており、諸星ファンなら見て損のない作品だ。

作中で「おいしい!」と言われる「トポール」のケーキだが、三鷹台「ローラン」のケーキも負けていない。一見、その店構えと同じ様にレトロな「定番」ケーキが並んでいる様にも見えるが、じっくり見て、そして食べてみるとひとつひとつにお店の個性とこだわりが感じられる。甘すぎない替わりにフルーツやクリームの素材の甘さと旨さが印象に残り、満足感がありながら同時に「もう1つ2つ食べたいな」とも思ってしまう美味しさだ。「ローラン」は例年6月後半から9月末くらいまで長期休業するので、秋の涼しくなったころに是非訪れて欲しい。

ちなみに「ローラン」の店舗と若干似た建物が、作中の「ためらい坂」を下った突き当たりに描かれている。

諸星大二郎「栞と紙魚子」からの引用は 作品リスト [1995-07](26)ためらい坂 より。

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