「頸山城妖姫録」に登場する「傑笑園」(オリジナル版では「刹笑園」)のモデルとなった庭園は「殿ヶ谷戸庭園」(成立時の名前は「随冝園」)である。作中の「傑笑園」は首山(久我山)に位置する庭園だが、殿ヶ谷戸庭園は国分寺市に存在する。(以下、各写真は2016年撮影)
作中では「都指定の庭園」とされているが、モデルとなった庭園は「国指定名勝」である。成立時期も鎌倉時代と近代(大正2年ごろ)と開きがある。
導入シーンの背景は各コマ毎に元になったアングルを見つけられるほど、風景が再現されている。
池の周囲は「松の生えた小島」「石を並べた橋」「滝」と個々のパーツはモデルが存在するが、全体の構成は大きく変更されており、同じ風景となるアングルを見つける事はできなかった。
滝も、「傑笑園」のものと「殿ヶ谷戸庭園」のものでは大分サイズ感が異なる。ここから地底に入ることはとてもできなそうだ。
池の周辺は滝を中心に物語のキーとなる場所であるため、先に作中の仕掛け・ストーリーに合わせた地形(地図も作中とモデルとで大きく違いがある)が作られ、背景はその地形を反映する様に、モデル庭園のパーツを分解・再構成して描かれたのではないだろうか。
作中の「首のとれた地蔵」は無いが、池に隣接して、諸星読者にはおなじみ「馬頭観音」の石碑があった。
「長い廊下」と同様の罠が仕掛けられた「垣根の道」の替わりに「萩のトンネル」がある。9月ごろに来ればトンネルを覆う萩の花を見ることができるそうだ。これらの写真は12月に撮影したが、庭園としては春か秋に訪れるとより楽しめるだろう。
諸星大二郎「栞と紙魚子」からの引用は 作品リスト [1999-05]頸山城妖姫録(1) [1999-07]頸山城妖姫録(2) より。